こんにちは✿
私はよく「生き方」や「生きづらさ」について考えることが多いです。
単純に哲学的なことに興味があり、普段からネットで調べたり本を読んだりしています。
生きづらさはその人の気質や性格、環境など色々あると思いますが、今回は「トラウマ」についての本を読んだので、それを共有できたらなと思い、記事にしました。
というわけで、今日のテーマは「トラウマ」です。
過去にもトラウマについての記事は書いていますが、今回はトラウマ研究者の本を読んで書きました。
この記事のほとんどは、その本から引用させていただいています。
引用している本はこちら。
少し分厚いですけど、長年トラウマについて研究している方の本なので、すごく勉強になりました。
トラウマについて詳細に書かれているので、大変興味深かったです。
興味を持った方はぜひ!
トラウマとは?

トラウマとは、心に深い傷を残す出来事や経験を指します。
人生において、予測不可能で強烈な出来事が、時には心の奥深くに刻み込まれ、それがトラウマを生む原因となります。通常の日常生活で経験するストレスや困難な状況とは異なり、トラウマは異常なほどの精神的な衝撃を伴います。
トラウマは様々な形で現れ、
- 事故
- 虐待
- 災害
- 戦争
などの極端な状況が挙げられます。
同じ出来事でも人それぞれ異なる影響を受けることがあり、子供時代の虐待や家庭内の問題、そして心の中で解決しきれない葛藤なども、トラウマの源となり得ます。
これらの出来事がトラウマとして残ると、その影響力は大きく、しばしばそれに苦しめられることになります。トラウマの影響は直ちに表れないこともあり、時には数年経ってから現れることがあります。そのため、トラウマに気づきにくく、放置されがちな傾向があります。
トラウマが心に残る主な要因は、出来事が予測不可能であり、かつ個人にとって脅威的であると感じられることです。この心の傷は、適切なサポートや処置なしには、長期間にわたって影響を与え続ける可能性があります。
トラウマがもたらす悪影響

心が不安定になる
トラウマが生み出す最初の悪影響の一つは、心が不安定になることです。
トラウマを負った人は、癇癪を起したり、感情のコントロールが上手くできない人もいれば、喜びも悲しみも感じるのが困難になる失感情症になる人もいます。
これらはトラウマによって自分の主体性を奪われることが原因とされています。
自分の主体性が奪われると、自己認識が曖昧になり、自分の本当の気持ちを見失ってしまいます。
自分の体の中で何が起こっているかを感知するのが苦手になってしまい、欲求に対して上手く対応できず、無感情になったり、逆に感情が爆発したりします。
トラウマを負った人々は、自分の体の内部で絶えず危険に感じている。(中略)彼らの体は、内臓の危険信号をひっきりなしに浴びせかけられ、それを制御しようとするうちに、腹の底で感じるものを無視し、内部で起こっていることの自覚を麻痺させるのが得意になってしまう場合が多い。彼らは自己から隠れることを学ぶのだ。
『身体はトラウマを記録する 脳・心・体のつながりと回復のための手法 P.162』
自分自身へのメッセージを無視し、自覚を麻痺させる状態になるため、危険なもの・有害なもの、安全なもの・ためになるものの区別もつきにくくなり、まわりからの励ましや優しさに気付けず、アルコールや薬の常習犯になってしまうのも、こういったものが背景があるからとされています。
良好な人間関係が築きにくくなる

トラウマを負った人は、良好な人間関係を築くのが困難になる可能性もあります。
特に子供時代に信頼できる人がいなかったり、愛情や保護求めていいはずの相手(親など)に怯えたり、拒絶されたりした経験があったら、他者に警戒心が生まれ、心を開くのがより困難になります。
また、トラウマを負った人は感情のコントロールが上手くできない場合が多く、急激な感情の波が押し寄せ、他者に対して怒りや不安をぶつけることがある一方で、感情を遮断し遠ざけることもあります。
これが人間関係に悪影響を与え、他者とのコミュニケーションが難しくなる要因となります。
社会的に生きづらくなる
トラウマが個人の心と人間関係に深い悪影響を与えると、社会的に生きづらくもなります。
心が不安定になり、人間関係も希薄になると社会的に孤立した状態になり、こういった状態が進むと、仕事や学業に対するモチベーションが低くなり、職場や学校での適応が難しくなります。
他にも、
- 職場での常習的欠勤
- 金銭的問題
- 生涯年収の低さ
などの問題も生じます。
さらに、何かの些細なきっかけによりトラウマのフラッシュバックが起こってしまうので、社会的なイベントや集まりから遠ざかりがちになり、ますます孤立感が増してしまいます。
身体的・精神的な病気にかかりやすくなる

トラウマを負った人は様々な悪循環が重なり、身体的・精神的な病気にかかりやすくなります。
トラウマを負った人は、トラウマを負っていない人に比べ、
- 慢性閉塞性肺疾患
- 虚血性心疾患
- 肝臓病
- がん
- アルコール依存症
- 薬物依存症
- うつ病
などの重大な病気を引き起こす確率が圧倒的に高いことが、様々な研究や調査でわかってきています。
これらの病気は、トラウマによって自己のコントロールを失い、心身ともにバランスが崩れ、免疫系統や生理機能、自律神経などが乱れることが原因とされています。
また、トラウマを負った人は、ストレスを感じるとそれをストレスだと気づく代わりに、偏頭痛や喘息などの発作を起こすことで応じることもあり、身体的苦悩の信号を自覚できないで重症化してしまうことも多いです。
過去に縛られ「今」を生きられなくなる
トラウマを負った人は、その過去に縛られ、「今」を思う存分生きられなくなります。
過去のトラウマが頻繁に再現されることで、個人はその出来事に縛られ、現実世界と過去のトラウマの境界が曖昧になります。これにより、日常生活の中でトラウマが引き金となり、過去の辛い経験が繰り返し思い出されることがあります。
これが続くと現在の瞬間を大切に感じることが難しくなり、生きることへの意欲が低下してしまいます。
「彼らはトラウマ記憶を統合できないため、新たな経験を取り込む能力も失ってしまうらしい。それは……あたかも彼らの人格がある時点で完全に凝り固まり、新たな要素を加えたり取り込んだりしてそれ以上拡大することができなくなったかのようだ」。
『身体はトラウマを記録する 脳・心・体のつながりと回復のための手法 P.297』
トラウマを負った人は、
「昔は昔、今は今」
「過去に怖い経験をしたが、今は安全だ」
という考えに行きつけず、トラウマによって未来への前向きな気持ちが持てなくなってしまいます。
脳科学から見てもトラウマを負った人の脳には異常がある

脳科学的に見てもトラウマを負った人の脳には異常があることが証明されています。
トラウマがフラッシュバックされた脳をスキャンし、その脳を分析すると、
偏桃体(脳内において情動を担うところ)が活性化
↓
強いストレスホルモンの分泌と神経系の反応を引き起こす
↓
背外側前頭前皮質(脳の記憶、思考、行動などの司令塔)が機能停止になる
という流れになっていることが解析されています。
このような脳の動きになると、その人は急激に汗をかき、震えや動悸が止まらなくなり、時間の感覚が麻痺した状態になり「この体験が永遠に続く」という錯覚にも襲われます。
また、人によってはフラッシュバックのとき、頭が空っぽになり何も感じなくなる「解離」状態になってしまう人もいて、その脳をスキャンすると脳の全領域がほぼ活動停止状態になっていることも確認されています。
トラウマは遺伝子に関係あるのか?

後天的には、誰しもがトラウマを負ってしまう可能性はありますが、生まれつきの体質や遺伝子がトラウマの発症にどの程度影響を与えるのかについては、多くの研究が行われています。
現代の医学において、特定の遺伝子がトラウマの発症と関連しているとわかってきています。
しかし、一部の遺伝子がトラウマを発症しやすくする可能性はありますが、愛情豊かな保護者の育成が、トラウマの発症のリスクを軽減するとされています。
一方で、トラウマになるのを抑える役割を果たす遺伝子があることも報告されていて、これらの複雑なお互いの作用によって、遺伝子がトラウマに与える影響はよく理解しきれていないのが現状です。
しかし、育児環境がトラウマの発症に与える影響はより明確で、安定した愛情とサポートを受けた子どもは、遺伝子によるトラウマの発症リスクが低まる傾向があり、愛情豊かな環境は遺伝子による影響を相殺し、子どもたちの心の健康を支えるとされています。
サルと人間は、セロトニン遺伝子の変異を二つ共有している(中略)ニュージーランドの研究者アレク・ロイが発見した。結論は明白で、子供に同調してくれる、思いやりのある親に育てられた幸運な子供たちは、この遺伝関連の問題を起こさないのだ。
『身体はトラウマを記録する 脳・心・体のつながりと回復のための手法 P.257 – P.258』
トラウマを克服する方法は?

トラウマ経験をなかったことにはできませんが、対処する方法はあります。
トラウマを克服する方法は、
- 自己を確立させる
- 心の中を再構築する
- 人と関わる
- 医療・文化の力を借りる
などが有効とされています。
具体的には、
- マインドフルネスをする
- 自分自身へ手紙を書く
- ヨガをする
- 演劇をする
- 自分に合ったセラピー・医療を受ける
などがあります。
まとめ:トラウマは過去に縛られ、自己を支配されてしまうもの
トラウマについて少し理解が深まりましたでしょうか。
本書の中では、
「我々の苦しみの最大の源泉は、自分自身に語る嘘である」
という言葉があり、トラウマはまさしくそれを誘発させるものであるとも書かれています。
トラウマはその人を支配し、過去に縛りつけ、今を精一杯生きるのを邪魔してくる厄介なものです。しかし、だからこそトラウマについて正しく理解をし、適切な対処をすることが重要になってきます。
今では研究が進み、トラウマが人に与える影響やトラウマを負った人の脳の動きなどが科学的にわかってきていて対処法も段々と解明されてきています。
「トラウマを克服する方法」を探している方は、近いうちに投稿予定の記事もぜひ読んでみてください。
というわけで、ここまで読んでくれてありがとうございます。
それでは✿
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