こんにちは✿
今回も「トラウマ」について記事を書こうと思います。前回書いた記事の続きとして、今回は「トラウマを克服する方法」がメインです。
前回の記事はこちら。
前回の記事同様、今回の記事もトラウマの研究者の本から内容を引用させていただきました。
引用している本はこちら。
トラウマを負った人の脳の仕組みやトラウマを乗り越える方法などが事細かく書かれています。
興味がある方はぜひ!
トラウマとは?

トラウマとは、心に深い傷を残す出来事や経験を指します。
人生において、予測不可能で強烈な出来事が、時には心の奥深くに刻み込まれ、それがトラウマを生む原因となります。通常の日常生活で経験するストレスや困難な状況とは異なり、トラウマは異常なほどの精神的な衝撃を伴います。
トラウマは様々な形で現れ、
- 事故
- 虐待
- 災害
- 戦争
などの極端な状況が挙げられます。
同じ出来事でも人それぞれ異なる影響を受けることがあり、子供時代の虐待や家庭内の問題、そして心の中で解決しきれない葛藤なども、トラウマの源となり得ます。
これらの出来事がトラウマとして残ると、その影響力は大きく、しばしばそれに苦しめられることになります。トラウマの影響は直ちに表れないこともあり、時には数年経ってから現れることがあります。そのため、トラウマに気づきにくく、放置されがちな傾向があります。
トラウマが心に残る主な要因は、出来事が予測不可能であり、かつ個人にとって脅威的であると感じられることです。この心の傷は、適切なサポートや処置なしには、長期間にわたって影響を与え続ける可能性があります。
トラウマを消すことはできないが「対処」はできる

トラウマを消すことはできないですが、「対処」することはできます。
重要なのは、自分自身のトラウマを理解し、それを受け入れ、適切な対処法や克服方法を見つけることです。
誰も戦争を「治療する」ことはできないし、それを言うなら、虐待やレイプや性的虐待をはじめ、他のどのような恐ろしい出来事であれ「治療」することもできない。起こってしまったことを、なかったことにはできない。だが、対処できるものはある。
『身体はトラウマを記録する 脳・心・体のつながりと回復のための手法 P.332 ~P.333』
トラウマから回復するために一番重要なのは、「トラウマによって奪われた自己を取り戻す」ことです。
そのためには、以下の4つの方法が必要になってきます。
- 落ち着いて意識を集中した状態になる方法を見つける
- 過去を思い出させる光景や思考、音、声、身体の感覚に反応するとき、落ち着きを保ち続けることを学ぶ
- 今を思う存分生き、まわりの人たちと関わる方法を見つける
- 生き延びてきた手段も含め、自分に隠し事をしないで済むようにする
さらに、トラウマを負った人は、「トラウマを負ってしまったのは自分が悪い人間だったから」と自己否定にもなりがちです。
しかし、トラウマを負っていい人など1人も存在せず、自分のせいではないことを理解し、自己肯定感を高めるのも重要です。
トラウマは彼らのせいではなく、彼ら自身の欠点によるものでもなく、彼らのような目に遭って当然の人など誰もいないという事実を受け容れることに尽きる。
『身体はトラウマを記録する 脳・心・体のつながりと回復のための手法 P.288』
トラウマを克服する方法

トラウマを乗り越えるためには、自分に合った克服方法を正しく知り、焦らず実践していくことが大切です。
そのためには、以下のことが重要になってきます。
- 自己を再構築する
- 過去を受け入れる
- 人と関わる
- 医療・文化の力を借りる
自己を再構築する
1つ目は、「自己を再構築する」です。
トラウマを負った人は、感覚や思考がトラウマに支配され、自分の主体性が奪われてしまいます。
そうなると、嬉しいときは嬉しい、悲しいときは悲しいなど当たり前の感情すらわからなくなってしまい、自分に嘘をつき続けることになってしまいます。
さらにトラウマを負った人は、自分の体が「誰か別の人の体」に感じたり、または「体がない」かのように感じる人もいます。
そのため、自分の体と自分そのものを、もう一度結びつける必要があります。
回復のための課題は、体と心──すなわち自己──の所有権を取り戻すことだ。
『身体はトラウマを記録する 脳・心・体のつながりと回復のための手法 P.333』
また、トラウマを負った人は、
「自分は無価値だ」
「トラウマ体験をしたのは自分に非があったからだ」
と自己否定の考えに陥りがちです。
その考えを断ち切って前向きに生きるためには、自分の中の経験を自覚して、自分の中で起こっている出来事と仲良くなれるようになることが重要になってきます。
過去を受け入れる

2つ目は、「過去を受け入れる」です。
自分の主体性を取り戻すためには、トラウマ(過去)と向き合う必要があります。そのためには、トラウマと向き合ったとき、そのトラウマに圧倒されない方法を探し、
「あのときはあのとき。今は安全だ。」
と、過去は過去、今は今という事実を勇気を持って知ることが大切です。
自己を制御する能力を取り戻すためには、トラウマに立ち返る必要がある。自分に起こった出来事に遅かれ早かれ対峙しなければならないのだが、それは、自分が安全だと感じ、過去に立ち返ることによって再びトラウマを負わないようになったあとだ。最初にしなければならないのは、過去と結びついた感覚と情動に圧倒されていると感じる事態に対処する方法を見つけることだ。
『身体はトラウマを記録する 脳・心・体のつながりと回復のための手法 P.334 ~P.335』
人と関わる
3つ目は、「人と関わる」です。
トラウマ(特に人間関係で生じたトラウマ)から回復するには、同じ人間である他者と関わることも重要になってきます。
普通なら愛情や保護を求めて当然の相手(親など)に、怯えたり、拒絶されたりしたら人に心を開けなくなり、良好な人間関係を築くのが難しくなります。
そうなると、共感や信頼の喜びを感じることなく、孤独感や対人恐怖の感情が増してしまいます。
家族や友人はもちろん、サポートグループや専門家などの他者とのかかわりは不安や孤独感を軽減し、トラウマからの回復に役立ちます。
医療・文化の力を借りる
4つ目は、「医療・文化の力を借りる」です。
トラウマによって脳の機能に異常をきたすことは、多くの研究で実証されています。
心臓に異常があったら、その専門の治療を受けるのと同じように、トラウマを負ったら、その専門の医療やセラピーを受けるのは合理的です。
また、伝統的な文化や芸術もトラウマに有効であるとされています。
トラウマを克服する具体的な実践方法

トラウマを乗り越える具体的な実践方法を紹介します。
マインドフルネスをする
1つ目は、「マインドフルネス」です。
マインドフルネスとは、過去や未来、経験や先入観にとらわれず、「今この瞬間」の自分の気持ちや状況に集中することを指し、自分の思考・感情・行動をありのまま受け入れて観察する方法のことをいいます。
トラウマを負った人の一番の目標は、過去ではなく「今」を存分に生きることで、「今」に集中する思考法であるマインドフルネスはとても効果的です。
トラウマを負った人は、胸が張り裂けるような感覚に常に苦しみ続け、その苦しみのあまり感覚を避けてしまうことが多いです。
しかし、マインドフルネスの活用でその不快な感覚に気付くと物の見方が変わったり、その感覚が一時的なものであると知ることができます。
マインドフルネスを用いたセラピーには、
感覚に注意を集中させる
↓
自分の姿勢のわずかな変化や、呼吸や思考の変化に反応するのに気づく
↓
不快な感覚が現れたとき、それを言葉で説明する。「不安に感じるときは胸が潰れるような感覚がある」など
↓
その不快な感覚に意識を集中する。(そのとき、深呼吸したり、泣きたくなったら泣いてもいい)
↓
その感覚がどう変化するのかを注意してみる
などのやり方があるそうです。
自分の身体的反応を観察し、それに耐えることを学ぶと過去(トラウマ)に安全に立ち返れるようになり、体の混乱状態にも耐えられるようになります。
さらに、研究によると、マインドフルネスを練習した脳の偏桃体(脳内において情動を担うところ)は、活性化が抑えられ、トラウマのトリガーになりそうなものに対して反応しにくくなるというのが実証されています。
自分自身に手紙を書く

2つ目は、「自分自身に手紙を書く」です。
「書く」ということは、自分の内面を知る方法で非常に効果的です。
怒りや悲しみの感情を手紙にぶつけると気分がスッキリしますし、その手紙を誰かに出す義務もないので、気楽でいられます。
また、自分に宛てた手紙は、
- 他者のことを気にせずに自分の思考に集中できる
- 手紙を読み返すと新たな発見があったりする
など、自己認識に繋がるメリットがあります。
自分自身に手紙を書くときには、他者の判断を気にしなくて済む。自分の思考にただ耳を傾けて、その流れに身を任せればいい。書いたものをあとになって読み返すと、しばしば驚くような真実が見つかる。
『身体はトラウマを記録する 脳・心・体のつながりと回復のための手法 P.391』
自身への手紙は、
「トラウマ体験のとき何を感じたか・どんな影響を受けたか」
「トラウマ体験についてどう向き合うか」
など、自己認識の手助けやトラウマを乗り越える方法を考えるきっかけになりえることが多く、トラウマの研究でも自身の経験を「書く」ことによって気分が改善し、心身ともに健康的な状態に繋がったという報告もあります。
適切なセラピー・医療を受ける
3つ目は、「適切なセラピー・医療を受ける」です。
トラウマからの回復には、専門家・セラピストの指導や手助けなども有効です。また、専門家やセラピストとの繋がりによって、人との交流も生まれます。
トラウマの治療法やセラピーはたくさんありますが、特定の治療法に固執せず、自分に合う方法や専門家・セラピストを丁寧に選んで実践していくことが大切です。
トラウマのセラピーには以下のようなものがあります。
- アートセラピー
- 音楽セラピー
- ダンスセラピー
トラウマの治療法は以下のようなものがあります。
- EMDR(眼球運動による脱感作と再処理法)
- IFS(内的家族システム療法)
- PBSP療法(ペッソ・ボイデン・システム精神運動)
- ニューロフィードバック

トラウマの治療で「薬物療法」はどうなの?
トラウマ治療で「薬物療法」もありますが、薬の効果には限界があり、より自然で根本的な治療の方が重要になってきます。
ヨガをする

4つ目は、「ヨガをする」です。
トラウマからの回復において、ヨガも非常に有効なツールとして知られています。
ヨガは、古代インド発祥の心と体を統合し、内面の平穏と調和を促す練習法です。日本でも割とポピュラーになっているヨガは、「呼吸法・ポーズ・瞑想」を組み合わせたものです。
これらを組み合わせたヨガは、トラウマによって麻痺してしまった内部の感覚世界を復活させるのに役立ちます。
ヨガは自分の内部の感覚に意識を集中させ、マインドフルネスを育み、心と体のつながりを強化します。ポーズや呼吸法を通じて、心と体が一体となり、内なる平穏を見出すことができます。
このようにして、ヨガはトラウマからの回復において、自己理解と内面の安定を促す重要な役割を果たします。
深掘り記事はこちら。
演劇をする
5つ目は、「演劇をする」です。
感情表現やコミュニケーション能力を高める「演劇」や「声劇」などもトラウマからの回復において、非常に有効な手段とされています。
トラウマを負った人は、トラウマになった出来事を忘れようとするあまり、自分の気持ちも一緒に蓋をしてしまいがちですが、演劇では、感情を声と体で表現しなければなりません。
こうした感情を表現する場は、トラウマを負った人の「自分の感情を探す」きっかけにもなりえます。
さらに、演劇の舞台では自分とは違う別のキャラクターになりきるため、自身の経験と向き合ったり、新たな自分との発見も期待できます。
また、演劇は集団で一緒に動いたり、歌ったりするため、人とのコミュニケーション能力向上にも繋がります。演劇により、他者の存在を意識するようになり、自然と交流も生まれます。
他者と一緒に何かを達成し、苦手なことに挑戦する姿勢は、トラウマを負った人には自己成長と自己発見を促進するものとなります。
深掘り記事はこちら。
まとめ:トラウマに支配されず自分らしく生きよう
トラウマから回復する効果的な方法は、長年の研究で徐々にわかってきています。
しかし、どの方法が一番いいかというのはなく、決まった手順で容易に効果があるわけでもありません。大事なのは、自分に合った方法を探すことです。
トラウマと向き合うことは、容易なことではないのかもしれませんが、勇気を持って回復に取り組むことが、トラウマから解放され、自分の人生を生きる一番の近道だと思います。
今回の記事は「トラウマを克服する方法」ですが、前回の記事はトラウマの詳しい説明を書いています。
興味がある方はそちらもぜひ。
ここまで読んでくれてありがとうございます。
それでは✿
コメント